hitokoto

阿自岐神社

ajiki





  祭  神:主祭神:味耜高彦根神 道主貴神
       相殿神:天児屋根命 保食神 須佐之男命
       合祀祭神:天照大神 大物主神 應神天皇 宇迦之御魂神 猿田彦神 大己貴命
            埴山姫神 
  説  明:境内看板を転載します。
      「式内とは、醍醐天皇延長五年十二月に撰選せられた延喜式神名帳所載の神社の意。
       古より朝廷の尊崇、殊の外に篤く、年々官幣に預かった社である。その数全国で
       二千八百六十一社、近江国で百五十五社、犬上郡内で五社。当社はその一である。
       此の地、安食の名は、当社名「阿自岐」に由来するもので、食物豊富にて安住出
       来る地の意である。
       境内より湧出する清水は、深遠幽雅なる園地を形成して、古代庭園の様相を伝え
       るものであるが、湧水は旱魃甚だしき時も、こんこんとして尽きる事なく常に此
       の地を灌漑して年穀豊かに稔り、文字通り安食の里となした。
       氏神恩恵に報ゆる敬神の花は、自ら咲き出で、天朝に達し、官幣に浴したのは、
       その結実である。
       当庭園は、昭和三十五年、滋賀県文化財名勝に指定された。」
  住  所:滋賀県犬上郡豊郷町大字安食西663
  電話番号:0749−35−2743
  ひとこと:「阿自岐」とは、「安食」の意味だ、ということですね。
       つまり、「楽園」ということのようです。

       楽園・・・。
       この言葉の定義も、むちゃくちゃ難しい・・・けど、まずは、ご祭神の顔ぶれを
       ちらちらと見てみましょう。

       主祭神は、味耜高彦根神。
       社名の「阿自岐」と音が似ていますね。
       もし、社名がご祭神名から来ているのなら、「安食」という言葉との関連は、ど
       うなるのかなぁ。
       ご祭神の名も、「安食」から来ている、ということなのかもしれません。

       次の主祭神、道主貴神は、私は始めて拝見するお名前です。

      「日本神名辞典」をひいてみると、
      「宗像三女神の総称として紀一書に記されてゐる」
       と説明されていました。  

       そんな話しあったっけ(^^ゞ
       えぇっと・・・。
       あぁ、やっぱり、天安河における誓約の場面ですね。
       一書(第三)に該当の文章がありますので引用しましょう。

      「日神が素戔鳴尊と、天安河を隔てて、向かい合って誓約していわれるのに、『お
       前がもし悪い心がないならば、お前の生む子はきっと男性だろう。もし男を生ん
       だら私の子供として、高天原を治めさせよう』と。そこで日神がまず、十握剣を
       食べられて、お生まれになった児は、瀛津島姫命で、またの名は市杵島姫命であ
       る。また、九握剣を食べてお生まれになった子は、湍津姫命である。また八握剣
       を食べられてお生まれになった子は、田霧姫命である。さて素戔鳴尊がその左の
       もとどりにまかれた五百箇の統の瓊を口に含んで、左の掌の中において、男神を
       生まれた。そして口上を言って、『今こそ私が勝ちました』と。そこでこの言葉
       によって名付けて、勝速日天忍穂耳尊という。また右のもとどりの瓊を口に含ん
       で、左の腕の中において、天津彦根命を生まれた。また右の腕の中から、活津彦
       根命を生まれた。また左の足の中からひ之速日命を生まれた。また右の足から熊
       野忍踏命を生まれた。またの名は熊野忍隅命という。そのように素戔鳴尊の生ん
       だ子は皆男神である。それで日神は、素戔鳴尊がはじめから赤き心であることを
       理解されて、その六柱の男神をとって、日神の子として高天原を治めさせた。日
       神が生まれた三柱の女神を、葦原中国の宇佐嶋に降らせられた。今、北の海路
      (朝鮮半島への海路)の中においでになる。名付けて道主貴という。これが筑紫の
       水沼君らの祭神である。」

       一応、説明しておきますと、文中の
      「赤き心」
       とは、
      「真っ赤に燃える〜熱いハートの男なのさぁああ!!」
       という意味です。

       というのは、真っ赤な嘘で(^^ゞ
      「きよきこころ」
       と読みます。

       対語は、
      「黒き心」。

       赤と黒が対になっているのが面白いですね。
       現代人の感覚なら、「きよきこころ」は「白き心」って表現しちゃいそうなとこ
       ろです。

       まぁ、それはいいとして、この「一書」は、三女神が天照大神の子供である、と
       していますね。
       本書及び、他の「一書」、古事記では、通常、三女神が素戔鳴尊の子。六(五)
       男神が天照大神の子である、としているんです。
       だって、考えてみてください。
       この書のように、勝速日天忍穂耳尊を含む六男神が、素戔鳴尊の御子だとすれば、
       当然、勝速日天忍穂耳尊の子供である瓊々杵も素戔鳴尊の系統であるということ
       になってしまいます。

       つまり、天皇家の始祖は、天照大神ではなく(天照大神の養子ではありますが)
       素戔鳴尊だということになっちゃうわけです。

       そして、この書の内容の不思議は、
       れっきとした天照大神の御子である、宗像三女神は、なぜか、高天原ではなく、
      「葦原中国」に降らせたまっているところにもあります。
       なぜ?なぜなぜなぜなぜ???

       まぁ、なんにしましても、「道主貴」という別称を持つところの宗像三女神は、
       天照大神の御子なわけですね。

       そして、もう一柱の主祭神・味耜高彦根神は、古事記によれば、大国主神と、多
       紀理姫の御子となっています。
       多紀理姫は「たぎりひめ」つまり、道主貴神のうちの一柱、「田霧姫」と同一神
       とされています。

       つまり、この系譜を見ると、味耜高彦根神もまた、天照大神の血筋。
       天照大神の直系の孫である、ということになるのです。

       この筋書き、ちょっとメロドラマチックに解釈すると、こんな感じになります。

       大会社の女社長が、流れ者の男と激しい恋に落ちたのでした。
       二人は共に、過去に結婚の経験があり、
       女社長には三人の娘が、男には六人の息子がおりました。

       ある日のこと。
       男は、何気ない風を装って、言いました。
      「君の会社の次期社長さぁ、誰に継がせるの?やっぱ、君の娘かい?ところで、君
       はボクを愛してるかい??」

       女社長はドキッとしました。
      「試されてる!!」

       女の細腕一本で大会社を切り盛りしてきた、女丈夫も、恋する男の前では無力で
       す。
      「いいえ、あなたの息子さんにこそ、社長業を継いで欲しいわ。あなたの美しい心
       と、鋭い頭脳を受け継いでるに違いないもの。」

       しかし、男は、横顔に蔭りを漂わせ、こんなことを言うのでした。
      「心配だなぁ。今は、そんなことを言うけど、ボクが年をとって魅力のかけらもな
       くなってしまったら、君はボクのことなんか捨てるに違いないんだ。そしたら当
       然社長の地位も、君の娘のものになるんだろうさ。」
        
       キュン!(←うわ、恥ずかしい(^^ゞ)
       女社長の胸が締め付けられました。
      「なんて可愛いことを心配するのかしら、この男ってば!」
       そこで、安心させるために、女社長は、とんでもないことを提案したのでした。
      「わかったわ。それじゃ、娘達は、今のうちに小さい会社任しちゃいましょ。そし
       たら、この大会社の社長になるのはあなたの息子だけになるでしょ?ね?」

      「君はなんて優しいんだ!信じていいんだね!!」
       おおげさに喜んで見せる男を見て、女社長は、
      「あ〜、いいことしたわぁ!」
       と思うのでした。

       ・・・でも、記紀によれば、その後、素戔鳴尊は裏切り続けるわけですが(^^ゞ

       まぁ、そういう複雑な神話に出てくるのが、道主貴神だ、と、そう言いたかった
       だけなんですが・・・。

       このご祭神が、「楽園」であるこの地に祀られるに至った経緯が気になりますね。
       ご由緒にはその辺りの説明がありませんが、
       実は、「女社長」は、男よりずっとしたたかで、「高天原」という大会社よりも、
      「宗像」というベンチャー企業の方が将来性があったのかもしれません。
       だからこそ、自分の血を引く娘にはちゃっかり宗像を譲ったのかも。

       ・・・あくまでも想像ですけどね(笑)

home 神社のトップに戻ります back