renai

胡宮神社

konomiya




  祭  神:伊邪那岐命 伊邪那美命 事勝国勝長狭命
  説  明:ご由緒書を転載します。
      「当社は第三十代敏達天皇の勅願、或いは聖徳太子の創祠の仁祠、或いは
       多賀大社二座の一とも伝えられ、古くは青龍山頂の『磐境』信仰にその
       起源をなし、鎌倉時代の頃から敏満寺(天台)の鎮守の神として祀られ
       て来たのである。故に当社の沿革は敏満寺の歴史の中に伺われることが
       多く、また一方多賀大社との関係も深い。申すまでもなく御祭神は天照
       大御神の御親神にましますと共に我国の国土山川草木を生成し永く群品
       の始祖と仰がれ給うのである、この二柱の大神が青龍山の聖地に御鎮座
       になり、その神格よりして寿福の神、命乞の社として崇められ、建久の
       昔、かの有名な僧俊乗坊重源が東大寺再興の砌り当社に延寿の祈願をし
       たと云はれ、殊に童子を守護し給うとして赤染衛門が願文を奉ったと伝
       えられ、江戸時代には畏くも禁裡仙洞御所の御乳人が参詣せられ皇子皇
       女の御安穏を祈願され、又授子授産の神、鎮火の神として崇敬されてい
       る。当社戦国時代元亀天正の兵火に罹ったが、将軍家密に尽力により寛
       永十五年に復興した、江戸時代には福寿院が別当として奉仕し殊に安永
       より享和の頃声海世代の時には社運隆盛を極めた。」
  住  所:滋賀県犬上郡多賀町敏満寺
  電話番号:074−926−136
  ひとこと:この神社には、伊邪那岐・伊邪那美命の夫婦神と一緒に、事勝国勝長狭
       命が祀られています。

       この神様は、塩土翁の別名とされているのですが、それがわかる箇所を
       日本書紀一書(第四)から引用してみましょう。

      「高皇産霊尊が、真床覆衾をもって、天津彦国光彦火瓊々杵尊にお着せに
       なって、天磐戸を引きあけ、天八重雲を押し分けてお降しになった。そ
       のとき大伴連の遠祖、天忍日命、来目部の遠祖、天櫛津大来目をひきい
       て、背には天磐靫を負い、臀には高鞆をつけ、手には天梔弓・天羽羽矢
       をとり、八目の鏑矢をとりそえ、また柄頭が槌のような形の剣を帯びて、
       天孫の前に立って降って行き、日向の襲の高千穂の、くし日の二上峯の
       天の浮き橋に至り、うきじまのたいらにお立ちになって、膂宍の空国を
       丘続きに求め歩いて、吾田の長屋の笠狭の崎につかれた。ときにそこに
       一人の神があり、名を事勝国勝長狭といった。そこで天孫がその神に問
       われるのに、『国があるだろうか』と。答えていう『あります』と。そ
       して『勅のままに奉りましょう』と。それで天孫はそこにとどまられた。
       その事勝国勝神は、伊奘諾尊の子で、またの名を塩土老翁という。」

       つまり、事勝国勝神は、瓊々杵尊が降臨した時に、最初の土地を献上し
       た神であるということになり、瓊々杵尊にとっては大叔父にあたるとい
       うわけです。

       その神とこの胡宮の関係が、なんとなく気にかかります。

      「胡」という文字を、漢辞海でひいてみると、
      「1.獣のあごの下の垂れた肉。
       2.中国の北部や西部に居住していた異民族の総称。えびす。
       3.長命な人、長寿。
       4.国名。春秋時代の国。今の安徽省阜陽県にあった。
       5.あごひげ。
       6.ひげの総称。
       7.姓。」

       とあります。

      「あごひげ」といい、「長命な人」といい、「老翁」の別名を持つ、事勝
       国勝長狭命との関連が深いように感じるのですが、どうでしょう?

       さて、皆さんは、夢判断に興味を持ったことはありませんか?

       私は、フロイドの「夢判断」を読もうとして挫折した経験を持つ・・・
       ま、ありきたりな人間ですが、夢判断・・・というか、夢による精神治
       療で有名な人物に、もう一人、ユングがいます。

       彼は、夢の登場人物を、夢主の意識の投影であると見なしました。

       ・・・と言っても、これは、いろいろな本(心理学やら夢判断本やら)
       の受け売りでしかないので、あまりアテにはならないのですが・・・

       オールドワイズマン・グレートマザー・アニマ・アニムス・シャドウ・
       ペルソナ

       という言葉を聞いたことはあるでしょう。

       グレートマザーとは、そのまま「偉大なる母」ですね。
       アニマとは、女性原理。
       アニムスとは、男性原理。
       シャドウとは、表に出てこない欲求とでも言いましょうか。
       ペルソナとは、仮面のこと。建前となる自分の姿です。

       そしてオールドワイズマンとは、自分を支配し、導く賢者のこと。

       この、事勝国勝長狭命には、このオールドワイズマンのイメージが強く
       意識されているように、私は感じています。

       ちなみに、母なる大地の神・・・いわゆる地母神の存在もあったでし
       ょう。

       花の窟神社をはじめとする熊野信仰では、それを伊邪那美命と重ねて
       いるんじゃないでしょうか。

       ユングは、「オールドワイズマン・グレートマザー・アニマ・アニム
       ス・シャドウ・ペルソナ」という6つのキャラクターで人間の精神を
       分割していますが、実際は、もっと多くの心のひだが存在するでしょ
       う。

       でも、確かに、人が自分の心を覗いてみたときに、一番多い頻度で発
       見できるのが、この6つであるようにも思います。

       日本神話の中にも、それぞれのキャラクターに当てはまる神々が存在
       するのではないでしょうか。

       オールドワイズマンとグレートマザーは、先に見たように、事勝国勝
       長狭命と伊邪那美命で表現されている、として、

       アニマ・アニムスは、これまた伊邪那岐命・伊邪那美命の他、たくさ
       んの神々で表されていると思います。
       天照大神と素盞鳴命にも、それは投影されているんじゃないでしょう
       か。

       そして、素盞鳴命は、英雄としての顔と手のつけられない暴れん坊と
       いう「シャドウ」を持ち合わせた神様でした。

       ペルソナとは・・・これはもう、神話自身が「仮面」ではないでしょ
       うか。
       本当に伝えたかった「事実」と、それを覆い隠す「仮面」。
       神話は、「仮面」により、「事実」をソフィスティケートしたとも言
       えるでしょうし、ぼかした、とも言えるように思います。

       と、いうことで。
       この神社には、オールドワイズマン・グレートマザー・アニマ・アニ
       ムス。

       特に「胡」という名称から、オールドワイズマンを強く感じたのでし
       た。

       単なる「長命の人」だけではなく、力強く導いてくださる男性的力。

       もちろん、単なる私見なんですけどね(笑)
       
       単なる、「多賀大社の本宮」であるとは思えない、もっと力強い原始
       の信仰を感じるお社でした。

       時間があまりなかったので、磐境に参拝できなかったのが残念ですが、
       もし、この神社に詣でられる方がいらっしゃったら、是非、磐境にも
       詣でて、その力を頂いてください。

       ******

       2007年10月15日
       改めて、胡宮神社に参拝し、磐座を拝んできました。
       青龍山は標高330mのお山。
       登山道も整備されていて、非常に参拝しやすく感じました。

       できましたら、往古は禊も行われていたという、「御池」にも詣でて
       みてください。

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