tonchi

化け地蔵




  採取地域:茨城県結城市
  ひとこと:草木染の体験をした時、おかみさんから聞いた話です
  原  典:
  登場人物:お地蔵様 お豆腐屋さん 酒屋さん
  物  語:ある晩のこと。
       お豆腐屋さんに、見上げるような大男がやってきました。

      「この徳利に、豆腐を入れてくれ」

       豆腐屋さんは、びっくりするやら困るやらで、
      「徳利は口が狭いんだから、豆腐は入らないよ」
       と断りました。
       が、大男は、どうしても聞き入れません。
       なんとしても、徳利に豆腐を入れろ、とごねるんです。

       仕方なく、豆腐屋さんは、「ダメだったらあきらめるだろ」と、
       豆腐を徳利に入れる真似をしてみました。
       すると。

       オーマイガー!!
       すとん、と、豆腐は徳利に入ってしまったのでした。

       豆腐屋さんが驚いているうちに、大男は、どこかへと消えてし
       まいました。
       ん~~、でかい体に似合わず敏捷なんですね。
       いや、その前に、これはれっきとした、「窃盗」です。
       こら~~。お代払え~~!!!

       さて、次の晩。
       酒屋さんに、見上げるような大男がやってきました。

      「このざるに、酒を注いでくれ」

       酒屋さんは、びっくりするやら困るやら。
      「ざるに酒が溜まるわけないでしょ」

       が、
      「どうしても、ついでくれ。なんとしても、ついでちょ~だい」
       大男はごねます。

       仕方なく、酒屋さん、「酒を捨てるようなもんだぜ」と思いな
       がらも、ざるに酒をつぎました。
       すると、

       お釈迦様もびっくり。
       酒はどんどんざるに溜まっていきました。

       酒屋さんが驚いているうちに、大男は、とんずら。

       これが、交互に毎晩繰り返されたもので、豆腐屋さんと酒屋さ
       んはたまったもんじゃありません。

      「せめて、酒屋に徳利、豆腐屋にざるにしてくれっちゅうねんな」
      「そんな問題ちゃうやろ?」
      「うちは豆腐屋やねんから、ざるで買いにきたらびっくりせんし、
       びっくりせんかったら、お金もらい忘れたりせぇへんがな」
      「あほか、相手は、常識が通じん大男やねんで。
       ざる持って豆腐屋にきたとしようや。
       そやけど、そのざるがいきなり大きくなって豆腐がなんぼでも
       入るようになって、豆腐屋さんびっくり。
       とかな。とにかく、一筋縄ではいかんに決まってるわ!!」
      「うそっ!!こわっ!!・・・どないしよ」
      「捕まえるしかないやろ」
      「え~~~っ!!怖いや~~~ん。いやや~~~」
      「そしたら、一生、豆腐をただで大男にとられ続けてええんやな?」
      「それもいやや~」
      「ほんだらしっかりせんかい!」
      (河内弁でお伝えしておりますが、本当は結城の言葉のはずです)

       なんていう会話があったかどうかは知りませんが、とにかく、
       二人で示し合わせて、大男の後をつけました。

       大男なのに、歩調が遅かったのでしょうか。
       酒屋さんと豆腐屋さんの追跡は、成功。
       弘経寺まで尾行してきました。
       が。

       お寺の前で大男は、す~~っと消えてしまったのです。
       どうせ消えるなら、もっと早く消えりゃいいんですが、そこら
       へんが昔話の、ほんわかしたところであります。

       諦め切れない酒屋さんと豆腐屋さん、弘経寺の境内に入ってみ
       ると・・・。

       お地蔵様が一体。
       なんとなく、後ろめたそうにしているお地蔵様の顔を見ると。
       んまぁ、お行儀が悪い。
       口の周りに豆腐がいっぱいついていました。
       しかも。
       う~~~~~~~む。

       ・・・・・酒臭い。

       酒屋さんと豆腐屋さんは、
      「そうか、お地蔵様が、お豆腐とお酒を欲しがってらしたんだな」
       と納得したということです。

       その後どうなったか?
       それは、聞きもれてしまいました(^^ゞ

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